おさかなコーディネータ ながさき一生 のおかしら付き

魚のこと、魚以外のこと、思ったこといろいろ書きます。

アニサキス報道の結果、魚がこれまでにない程お買い得になっている

先週、連日のようにアニサキスに関する報道がなされていたと思います。

 

一言で言うと、「アニサキスという寄生虫による食中毒被害が増えていて、生魚に寄生しているため気をつけよう」といった内容ですが、この報道が誤った認識を世間に広めてしまっているようです。

その結果、魚の値段が下がり、消費者にとってはこれまでにないくらい魚がお買い得となっています。ただ、真面目に頑張っている生産者や流通業者は魚が売れず痛い目に合っています。

 

結論を言ってしまえば、「アニサキスの被害が増えている」というのは誤りで、その報告件数が増えているというのが正しい事の捉え方です。なぜならば、「ここ10年で20倍になった」というのは、ここ10年の間にアニサキスによる食中毒被害の届け出が義務化された事が要因として大きいからです。

 

また、被害増加の原因として、「昨今、魚を生で食べる機会が増えたこと」も上げられていますがこれも大きな間違いです。

今回の報道に出てくる専門家は、食品衛生を管理している団体に所属する衛生の専門家です。彼らは、「アニサキスとはどんな寄生虫か」「アニサキスに感染した際の症状と予防法、対処法」といった話は詳しいのですが、魚の流通がどのようになっているかについては、専門外の分野になります。

魚流通の専門家でもない人からの話をもとに「昨今、魚を生で食べる機会が増えたこともあり」と言われても何の信憑性もありません。もっと言うとそれを示す統計も何もないのです。

私は、長きに渡り魚の流通に関わっていますが、ここ10年間で魚を生で食べる機会が増えたとはまったく思っていません。

 

アニサキス報道については、別途コラムをまとめましたので、こちらを読んでいただければと思います。

17.5.31 【コラム】〜アニサキス報道の実際について解説〜 | さかなの会

 

 

ただ、今回本当に怖いのは、どうしてこのような報道が一斉にされたのかということです。前述のように、アニサキス被害が拡大している事実はないのにも関わらず、このような報道を各社が一斉に行うということは裏で何かの力が働いている可能性があります。

 

本当に怖いのはアニサキスではなく、今回のように誤った報道が一斉になされ、みんなが誤った情報に従って行動を取ることです。このような事態が起こると食の流通が歪んでいき、本当に良い物を提供しようと頑張っている生産者や流通業者が淘汰され、そうでない業者だけが残ります。そのような状態は、消費者にとっても、誰にとってもメリットはないはずです。

 

はっきり言ってしまうと、みんなにとって身近で、かつ健康などに影響が大きい食品に関する情報は、今回のような不安を煽るような書き方をするとアクセスや注目が一気に増えます。しかも、中小零細企業多いこともあり、叩いたところで叩いた側は何の痛みも生じません。そのような事もあり、食に関する極々一部のネガティブな情報が、あたかも全体の事かのように報じられることは今回に限らず多々あります。

 

大事なのは、まず、冷静さだと思います。食の安全に関する情報については、上記のような状況もあるので、とりわけ冷静に受け止める必要があるのです。